若主のらぶらぶくりすますを見たくて見たくて我慢できなくなったので書き始めたんですが、書きたいことがたくさんあるのにたくさん文字量を書くのがめんどくさくていろいろはしょったら主題がぼやけた話になりました( ; ; )
だって2時間で書き上げたかったんだもん!
ほんとにぼやけた話です。短いです。
卒業後、はじめてのクリスマス。
鬼もきっと笑わない
貴文さんと恋人同士になって、はじめてのクリスマスがやってきた。
もちろん、イブは一緒に過ごすつもり……なのだけど、貴文さんの職場でありわたしの母校でもある『はね学』には毎年恒例の、イブにおこなわれるクリスマスパーティがある。
去年までは、貴文さんと過ごせるのが嬉しくて、とても楽しみなイベントだったけれど、いまとなってみれば『なにもイブの日でなくても』なんて、文句の一つでも言いたくなる。
だけど、これは貴文さんとおつきあいするにあたってあらかじめわかっていたことだし、それに、まったく会えないわけでもない。パーティの後、まっすぐに帰ってきてもらえば、ほんの少しだけ、一緒にいられる。
「と、いうわけで、あかりさん。イブはなるべく早く帰ってくるから、お部屋で待ってて」
と、貴文さんは先週のデートの帰りぎわに言ったけれど、もうそろそろ、午後9時半になる。
わたしの家の門限は10時だから、今部屋を出ないと遅れてしまうことになる。
貴文さんとつきあうようになってから、両親は以前より門限に厳しくなった。
そして、貴文さんはそれに気を悪くするでもなく、両親の気持ちもわかるから、といって、わたし以上に門限を気にしてくれているのだ。
だから、いくらイブの日だからと言って、門限を破ってまでこの部屋で待つのは、両親を心配させるし、貴文さんのことも困らせる。
(せっかく、ケーキ、作ってきたのにな)
貴文さんと食べようと思って、母と一緒にブッシュドノエルを作った。
本当は一緒に食べたかったけれど、これも仕方がない。
だけどせめて、帰ってきた貴文さんに、少しでもクリスマス気分を味わってほしいから、 お皿に切り分けて帰ろうかな、 と思った瞬間、強い思いが走った。
(それは、ダメ!)
二人で向かい合ってケーキにろうそくを灯して、来年に思いを馳せるために、わたしはこれを作ってきたのだ。
そもそもわたしがこうまでして、時間のないなか、ほんの少しでもいいから貴文さんに会いたいと思っているのには理由がある。
ロマンチックに過ごしたいとか、恋人同志だからとか、そういう単純な理由じゃあない。
そう思った次の瞬間わたしは、門限を遅らせてもらうため、家に電話をかけていたのだった。
*****
冷えきった貴文さんが息を切らせてドアを開けたのは、10時をほんの少し過ぎた頃だった。
「あかりさん、門限は!?」
なにより先にそれを心配するのが、とても貴文さんらしい。
「電話をかけて、条件付きで12時まで伸ばしてもらいました」
「条件?」
「はい。帰りは貴文さんに送ってもらうってことで」
「それだけ? そんなことなら、お安い御用です。でもご両親、よく許してくれたね」
「……ちょっと、渋ってましたけど」
「ほんと? 平気だった?」
「はい。だけど、その、悪いこと、しないって約束、で」
そうなのだ。わりと厳格な両親と、わたしを大切にしすぎる(それはもう、過保護なくらいに!)貴文さんとの思惑はそこそこ一致しているようで、貴文さんはわたしに、いわゆる『悪いこと』をまったく仕掛けてこない。
そりゃあわたしだって、恋人のいる女の子だ。興味はもちろんあるけれど……。やっぱり、いざとなったらこわいと思う。だから、こうしてわたしの気持ちを尊重してくれる貴文さんには感謝している。
その、当の貴文さんはといえば。
「……悪いこと……うん。悪いことは……しないです」
と、ひとりごちつつ、眉間にしわを寄せている。
「あの、貴文さん?」
呼びかけると、ふと、我に返ったように微笑んだ。
「あ。そうだ。あらためて、ただいま、あかりさん」
「はい。おかえりなさい、貴文さん」
どちらからともなく腕を伸ばして、抱きしめあった。貴文さんがまとう冬の空気を追い出して、かわりにわたしの体温を伝えるようにして、背中に腕を回す。
「やや。どうしたの? 甘えん坊になっちゃった?」
普段よりも、ほんの少し積極的なわたしが嬉しいのか、貴文さんは甘くて優しい声を出す。
「……うん」
「遅くなってごめんね。教頭先生に引き止められてたんです」
「ふふ。そんなことじゃないかって思ってました」
「部屋に灯りがついてて……。びっくりしたけど、嬉しかった。もう帰ってると思ってたから」
「はい。ほんとは帰ろうとしたんですけど……今日は、クリスマスイブだから」
「うん」
「少しだけでも、いっしょにいたかったの」
「そうなんだ、どうもありがとう」
貴文さんには、あたたかいクリスマスの思い出が少ない。
はね学の先生になってからは、毎年、クリスマスパーティーでそれなりに楽しく過ごしてはいただろうけど、それでも帰る場所は暗くて寒い、この部屋だったはずだ。
わたしは、そんな貴文さんに、灯りをともしたあたたかい部屋に帰ってきて欲しかったのだ。
貴文さんの過去にある、冷たいターキーやおもちゃのクリスマスツリーの日々を、遠ざけてしまいたかった。
それが、わたしが今日という日にこだわった理由だ。
「ねえ、貴文さん、おなかはもういっぱい?」
そう尋ねると、貴文さんは少しだけ体を離して「なにかあるの?」と首をかしげた。
「ケーキ、作ってきたんです。もし、食べられるなら、切りますけど、どうします?」
「え? 君の手作り?」
「はい。ほとんど母に手伝ってもらったんですけど。ケーキなんてはじめてだから、難しかったです」
そう言って舌を出すと、貴文さんはあらためてわたしを抱きしめた。
「……あかりさん、去年のクリスマスイブのこと、覚えてる?」
「はい」
覚えてるどころか、忘れようもない。その日こそ、不安定だったわたしたちの気持ちが、一つの場所に向かいはじめた日だ。
「僕の人生において、あれ以上に幸せなクリスマスイブは訪れないって思ってたけど、違った」
「うん」
「君といると、僕はどんどん幸せになります。来年はどれだけ幸せになってるのかな」
「そんな……」
……帰ってしまわなくて、よかった。あらためて、そう思った。それと同時に、こんなにささやかなことで大げさに喜んでくれる貴文さんの今までを思うと、胸が苦しくなる。
「あ、ケーキ、いただきます」
「じゃあ、切ってきますね」
そう言って、台所に向かおうとしたけれど、貴文さんは腕の力をゆるめてくれない。それどころか、もう、ハグとは言えないほどの力で、抱きしめてくる。
「あの、貴文さん?」
「……もう少し……。あと、一分だけ、このままでいさせてください」
貴文さんの声が、少し震えていた。わたしはそれに気づかないふりで、だまって貴文さんの腕に抱かれていた。
*****
きんきんに冷えた漆黒の夜空に、金平糖を撒き散らしたみたいに星が光る。
その下を、二人で手をつないでゆっくりと歩く。
「僕、来年のクリスマスパーティーは欠席します」
「え? そんなこと、できるんですか?」
「できるんです。っていうか、家庭のある先生なんかは毎年欠席してますよ? 気づかなかった?」
「知らなかった。わたし、貴文さんが参加するかどうかにしか関心がなかったから」
「あかりさん……またそんな、可愛いことを」
「だって、本当だもん」
「……まいった。……でも今は我慢です」
「え?」
気づけばもう、家の近くだった。
玄関先には灯りがつき、そして、人影が見える。
「あかりさん、あれ、お父さんじゃないですか?」
たしかに。腕を組んで仁王立ちしている姿は、シルエットだけで父とわかる。まるで、鬼みたいだ。
「うう、叱られるのかなあ……」
「いやいや、どちらかっていうと、叱られるのは僕でしょう。……あっ、いいことを思いつきました」
「へ?」
「叱られついでに、来年のことも叱られましょう」
「どういうこと?」
「来年のクリスマスは、お泊りのお許しをもらいましょう」
「ええ!? よりによって、今?」
「はい、今です。すぐ先のことなら許してもらえない確率が高いですけど、一年後の話となるとイメージがつきにくいから、なんとなく許されることが多いんです。それに、もうすでに門限のことで怒ってるなら、来年のお泊まりのことで怒っても、許す回数はまとめて一回ですから相手にも負担がかかりませんし」
「……そうなんですか?」
「はい。僕だって伊達に教頭先生に怒られてきたわけじゃないですから。叱られのプロですよ?」
「はあ……」
おかしな自慢をする貴文さんに、呆れるというか、なんというか。
「もし、許してもらえたら、来年のイブは赤プリでフランス料理でティファニーです。流行です」
「……? それ、なんのこと?」
「まあまあ。僕に任せておいてください。ってその前に、あかりさんは僕とのお泊まりは、嫌じゃない?」
「え? 嫌じゃないですよ?」
質問の意味がわからなくて、貴文さんをあおぐように見た。
貴文さんのグリーンの瞳の奥の光が、まっすぐにわたしに届く。そして、ほんの少しすがめられる。
「ね。わかってない。例えば僕が『来週の大晦日にお泊りしよう』って言ったら君も身構えるでしょうけど、来年のことだから、イメージ、わいてないでしょう?」
「え?」
「……僕が君に、悪いこと、するかもしれませんよ?」
「あぁ、そういう、……え?」
そこまで言われて、鈍いわたしにもようやくわかった。
きゅうに恥ずかしくなって、あわてて、真っ暗いアスファルトに視線を落とす。
そうだよね。貴文さんは、そういうことを、言ってるんだ。……そういう、こと。……貴文さんに全部をまかせる……って、こと、だよね。
「……あの、ほんとに、嫌じゃ、ない、ので」
うん。嫌じゃない。というより、すこし、嬉しい。それに、貴文さんは、一年もの猶予をくれた。さすがにそれだけあったら、覚悟だってできると思うし。
そう思って、再び貴文さんを見上げると、慈しむような表情で、わたしを見つめていた。
「うん。わかった。ありがとう。じゃあ、僕、頑張って叱られます」
そう言うと、貴文さんは、つないだ手を離そうとした。きっと、正式なお願いをするには、不似合いだと思ったのだろう。
でもわたしから、離れかけた手をにぎりなおす。
「あの、わたしも来年は、貴文さんと、少しでも長くいたいから。父に一緒にお願いします」
「……わかりました。援護、よろしくね」
「はい!」
「じゃあ、行こうか」
あらためて、貴文さんも、わたしの手を強く握った。
毎年やってくる、幸せなクリスマスに、一年一年思いを込めて。
来年の話だけど、二人とも、真剣だ。
そんなわたしたちのことを、鬼もきっと笑わない。
2014.12.25
PS.来年のクリスマスはこの続きを……!!
サンタさんお願いします
あと、先生に赤プリ言わせたかったから言わせました。ちな、赤プリはもうありませんが。
こういうネタ、もしかしてもうわからない人がいるのかな!?