前回の日記でいってたアレな話はやっぱお蔵入りだから!!
だめだよあんな脳みそフットーした話!!
だからかわりに雪合戦ネタおいとくね……
ここ数日、激しく雪が降っています。
まあ、わたしの住む地域は山間部なので、もともと雪が比較的多い場所ではあるんですが、ちょっと今年は12月からぶっとばしてますね。
1月2月ならわかるんですが……。
道路のアイスバーンこわいよ!!
でも、こんこんこんこんと降っては積もる雪を見ていたら、童心にも帰るわけです。
大人になっても、雪ってなんとなく、ワクワクしません?
というわけで、若主で雪合戦とかしたら可愛いなあって雪を見るたびモエっ/// ってするんですが、どうにも脳内の若王子先生が雪のなかにでてきてくれません。
雪合戦自体は想像できるんですが、そこに至るまでの過程がどうしても考えられません。
若王子先生、寒いのすっごく嫌がりそうなイメージがあって。
というわけで、書き始めてみたらどうにかでてきてくれるんじゃないかなと着地点もなく書き出してみたんですが、それでもかたくなに出てきてくれませんでした。
エサ(えろがらみの)で連れ出すってのも考えたんですが、そういう即物的な先生、いや、好きだけど、なんかこう、在学中で、大接近くらいはするけれど、恋人の一歩手前、みたいな状態じゃないと、雪合戦も無邪気にできないなあ、と。
……言ってることわからない? OK、OK。
おれの独り言だ、キニスンナ^^
短い話です。
雪合戦したかったけど先生が嫌がりましたよ、って話です。
今回の設定はデジさん高3、受験前、大接近6回目はクリアしてるっていう状態。
雪の日
放課後の化学準備室で、若王子先生特製ビーカーコーヒーをご馳走になりながら、「ねえ、先生。雪合戦しましょうよ」と、誘ったら、間髪入れずに「いやです」と、断られた。
はばたき市は基本、温暖な地域だ。
山のほうに行けば雪が降って、冬にはスキーもできるのだけど、市街地にはめったに雪は積もらない。
だけど、今日は降ったのだ。
夕べから続く小さな雪は降り止まず、今もふんわりとした白で校庭を覆い尽くしている。
そんな光景を見ていると、雪で遊びたくて、うずうずしてくる。近ごろは受験勉強ばかりして運動不足だから、久しぶりに体を動かしたい。
でも、一人じゃあ雪合戦はできないし。
だから、大人のくせして、こういう遊びには目がなさそうな若王子先生を誘ってみたのだけれど。
先生は、この提案にたいしてとてもクールで
「うう、冷えますねえ。こんな日にはあったかいところであったかいコーヒーを飲むに限ります」
なんて言いながら、あっという間に和やかなコーヒータイムへと持ち込んでしまった。
「そんなこと言わないで。ねえ、先生。修学旅行のとき、枕投げして楽しかったじゃないですか。きっと、雪合戦も楽しいですよ」
わたしがそう言うと、先生は「……修学旅行……」と、小さくつぶやく。
これはいけるかも? と、さらにわたしはたたみかけるように言う。
「そうです。ね、先生。きっと今回も楽しいです。やりましょうよ」
「……やっぱりいいです。あのとき、君は針谷君と組みましたね。そして、先生にたくさん枕をぶつけてきました。恩師に対するあの態度。今思い出しても悲しいです」
「ええ、先生。今更、そんなあ」
「楽しくなかったとは言いませんけど、別に今はやりたくありません」
そう言われても、かんたんに引き下がるわたしじゃあない。
「ほら、夏! 先生のお知り合いさんのクルーザーを掃除したの、楽しかったじゃないですか。水とか、かけあいしたりして!」
すると、それにはひっかかるものがあったのか、これまでは取りつく島もなかった先生が「ふむ」と少し考えこむ様子をみせた。
「たしかに。あれは楽しかったね。小波さんと二人で」
「でしょでしょ、だから、ねっ。少しだけ」
しかし、敵もさるもの。
「でも、あれは夏だったから寒くなかったし」
そう言うと、先生はより深く椅子に座り直して
「やっぱりやめておきます」と、眉間にかすかに力を入れてあらためて言い切る。
「もしかして先生、寒いから嫌なんですか?」と聞くと、「そうですよ。先生は猫なんですから。寒いのには弱いんです」と、のうのうと言ってのける。
それから続けて「だから、ダメなものはダメなんですよ」と、きっぱりと断言した。
わたしと先生のつきあいも、三年目になる。近ごろようやく、先生は案外、頑固だと言うことに気づいた。
ふだん、にこにこぽわんとしているから、なにを投げかけてもやんわりと受け止めてくれるような印象があって、それは実際、9.9割ほどはそうなのだけど、残りの0.1割は違う。
先生の気が向かないときは、なにをいってもどうやっても、けっして首を縦にはふらない。
(でも、そういうところも含めて、好きなんだよなぁ……)
だって。
そうやって、きっぱりと嫌なことは嫌だと言い切る相手は、わたしだけなのだ。
たとえば、今回のことも、単なるお取り巻きさんたちに誘われたなら『まだ仕事があるんです』とか『教頭先生に呼ばれてるんです』なんて、適当な嘘をでっちあげて、それこそ、相手を煙に巻いてしまう。
でも先生は、わたしには、それをしない。
それは、どうしてなのか。
わかるような気もするし、わからないような気もする。
おしゃべりが一段落したところで、雪合戦をすっかりあきらめたわたしは、化学準備室に備え付けてある、ぼろぼろの布張りソファに移動して、受験勉強用の数学の参考書を開いた。
先生は、机に向かって書き物をはじめる。
きっと、また、なにか難しい計算をするんだろうな、と思う。
そういえば、これもそうだ。
もう一年以上も前になるけれど、偶然、放課後の教室の黒板を使って先生が計算しているのを、見かけたことがあった。
そのときの先生は、あわてこそしなかったものの、まずいものを見られたような顔をして、その計算式を隠すようにわたしをその教室から遠ざけた。
でも、今の先生は、その計算をしていることをわたしに隠さない。
わたしが見てもさっぱりわからないから、なんの計算をしているのか尋ねもしないのだけど、もし尋ねたとしても、きっときちんと答えてくれる、と思う。
そう。先生は、ちゃんと向き合ってくれるのだ、わたしに。
これは以前の先生にはなかったことだ。そして、そうなったきっかけもよくわからないけれど、そう言えば、と思い返すと、放課後にこうして先生を訪ねるようになった頃からのような気がする。
わたしたちは、週に一度か二度、こんなふうに少しおしゃべりをして、その後は思い思いに放課後の時間を過ごす。それから、日が落ちる寸前に、二人で肩を並べて帰る。
いまやこれがわたしのささやかだけど、最も幸福な瞬間で、それが先生にとっても少しは幸福な瞬間であったら嬉しいなぁ、と思ったりしている。
「やや、これは、なに?」
あれから一時間半ほど。
ようやく数字の世界から抜け出した先生が、窓際に寄りそって並ぶ二つの雪だるまに気づいて、驚いている。
「ふふ。雪合戦はできなかったけど、せっかく雪が降ったから、雪だるま、作ってみました!」
あれからわたしは、数字の問題を二つ解いた。そのまま三つ目にとりかかっても良かったのだけど、やっぱり雪が気になって、校庭に出て雪だるまを作ってきたのだ。
数字に向き合っているときの先生は、わたしが少々騒いだくらいでは気づかないほど集中するから、それこそ、わたしがこっそり抜け出していただなんて思いもしなかったのだろう。
雪だるまを見つめたまま、じいっと考え込んでいる。
「あの、先生?」
声をかけると、先生はようやく我にかえったのか、ふんわりと微笑んだ。
「小波さんがここまで一人で、運んできたの?」
「はい」
「手、冷たくなかった?」
「少し」
「……手、貸して」
言われるままに、両手を差し出すと、先生の大きくてあたたかい手のひらが、わたしの小さな拳を包み込む。
じんわりと、先生の体温がわたしに移りはじめる。
「雪だるま、二つあるね」
「え? はい」
「もしかして、あれは」
そこで、先生は言葉を切った。
「うん。いいんだ。可愛いです」
「え、あの、」
なにを言いかけたんですか、と、聞こうとしたけれど、そこでわたしも言葉につまった。
続きの言葉が、なんとなく想像できたからだ。
もし、わたしが思ったようなことだったとしたらなにを言われても困るし、先生だって、なにを言っても困るからこそ、そこで言葉を切ったのだ。
「先生の手、あったかい」
そう言うのが、精一杯だった。
「……先生は、猫ですから」
「そうでした。先生、猫なんでしたね。ツナ缶、好きですしね」
「はい。先生の大好物です」
宙ぶらりんになった言葉は、もう追いかけない。
でも、会話を終えてしまうと手を離さなくてはいけないような気がするから、わたしたちは、とりとめもない話をして、この時間を少しでも長く、伸ばそうとしていた。
帰る前に先生はだいじそうにその雪だるまを冷凍庫に入れた。
はば学が私立のせいなのか、それとも全国区の教科準備室がそうなのかはわからないけれど、各準備室には小さな冷凍冷蔵庫が備え付けてある。
「雪だるまを保存するなんて、聞いたことないです」
「いいんですよ。僕がこうしたいんです」
「溶けて消えるのも儚くて、雪だるまの素敵さのうちのひとつなのに」
「普通の雪だるまはそうかも知れませんけど、これは、特別な雪だるまですから、溶かすわけにはいきません」
「え……? あ、」
また、言葉につまりかけたわたしに、先生が助け舟を出してくれる。
「やや。もうこんな時間だ。じゃあ、帰りましょうか」
そう言って、先生はあわてて白衣を脱ぎはじめた。
その夜、わたしは、消えてしまった先生の言葉の続きを考えた。
わたしは、あの雪だるまを先生とわたしのつもりで作った。そして、それを、仲よさそうに寄りそわせた。
たぶん、先生も、それをわかってくれている。
だけど、これに名前をつけたり、説明したり、答えを出してはいけないのだ、まだ。あと数ヶ月。わたしが卒業するまでは。
目を閉じると、小さな雪だるまたちが、暗闇のなかで、そっと寄り添っている姿が浮かんだ。誰もみてない。わたしと先生の、ひみつの雪だるま。
そのうち、わたしは眠りについた。
夢のなかで、わたしと先生は雪合戦をした。
もちろん、わたしの圧勝だった。
おわり